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2019年11月1日金曜日

(1774)  最近気になる「大変だァ」現象(阿川尚之)

 
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(K0915)  個人Blog 10月下旬リスト <サイト紹介>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/11/k0915-blog-10.html
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世の中には原因を断定的に説明する人がいて、同時に問題は全て誰かのせいだと主張する。複数の要因が絡み問題は単純ではない。原因が分からず解決も困難で責任が問えない問題が多い。できることから、やっていこう

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1.   大変だァ

1.1.  気象変動
1.2.  世界不況
1.3.  イラン危機
1.4.  老齢化

1.5.  その他
1.5.1. 大型台風の度重なる来襲と大きな被害、復旧の遅れ
1.5.2. 若年の親による幼児虐待と死亡
1.5.3. 福島第1原発にたまり続ける汚染水の処理
 
2.   悪いのは、あいつだ

2.1.   温暖化対策が進まないのは、各国首脳の責任だ
2.2.  「日本の少子化問題は、十分な数の託児所を作らない政府に責任がある」
2.3.  「子供の虐待がなくならないのは監督官庁の責任だ」
 
3.   これでは解決しない。何かが変だ

3.1.  複雑な要因からなっていて、よくわからない
3.2.  IT(情報技術)、AI(人工知能)では解決できない
3.3.  問題の原因と責任の所在が明らかになっても、解決しない
 
4.   何故、変になったのか

4.1.  解決できないのは誰かのせいだという発想の逆転が起きた
4.2.  現代人は、「誰かの責任」に帰すのに慣れてしまった
 
5.   こころすべきこと

5.1.  我々の知識や能力は限られていることに謙虚であるべきだ
5.2.  如何(いかん)ともしがたい問題があると認める
5.3.  困難で複雑な問題の解決に最善を尽くす
 
 
【展開】

1.   大変だァ
 「大変だァ」現象は内外で枚挙にいとまがない。

1.1.  気象変動
 21世紀の終わりまでには多くの島が海面下に没し、海沿いの主要都市が大洪水に襲われるとの予測がある。

1.2.  世界不況
 リーマン・ショック並みの金融危機が起こる可能性もあるという。

1.3.  イラン危機
 このまま緊張が続くと、戦争になるかもしれない。

1.4.  老齢化
 老齢化に少子化が重なり、社会保障財政や介護体制の維持が難しいといわれる。

1.5.  その他
1.5.1. 大型台風の度重なる来襲と大きな被害、復旧の遅れ
1.5.2. 若年の親による幼児虐待と死亡
1.5.3. 福島第1原発にたまり続ける汚染水の処理
 

2.   悪いのは、あいつだ
 世の中には原因を断定的に説明する人がいて、この人たちは同時に、問題は全て誰かのせいだと主張する。

2.1.  温暖化対策が進まないのは、各国首脳の責任だ
 スウェーデンの環境運動活動家で16歳の少女がヨットで大西洋を渡り、ニューヨークの気候行動サミットで、温暖化への有効な対策を取ろうとしない各国首脳を「裏切り者」と激しく非難した。

2.2.  「日本の少子化問題は、十分な数の託児所を作らない政府に責任がある」
 大幅に増やせば日本の人口は増えるのだろうか。

2.3.  「子供の虐待がなくならないのは監督官庁の責任だ」
 児童相談所を強化すれば虐待はなくなるのだろうか。
 

3.   これでは解決しない。何かが変だ

3.1.  複雑な要因からなっていて、よくわからない
 そもそも、こうした難問(気候変動)がなぜ起きているのか、どれも複雑な要因からなっていて、これまでの経験知を超える側面も多い。科学者の説明も素人には理解しにくい。その結果、「フェイクニュース」などという異論も出る。

3.2.  IT(情報技術)、AI(人工知能)では解決できない
 IT(情報技術)、AI(人工知能)など技術の飛躍的発展が、問題の解決に寄与するのか、むしろ難しくするのか、専門家にもよくわからないらしい。それでは解決できない

3.3.  問題の原因と責任の所在が明らかになっても、解決しない
 問題の原因と責任の所在が明らかになれば、解決は可能だと思われがちだ。実際、重大な問題が発生するたびに、政府や企業は原因を究明して解決すると約束する。マスコミもそうしろとハッパをかける。人々はそれを信じる。ある意味で楽観的である。
 

4.   何故、変になったのか

4.1.  解決できないのは誰かのせいだという発想の逆転が起きた
 20世紀後半以後、科学の著しい進歩によって不可能であった多くの問題の解決が可能になった。不治といわれた病気が治るようになり、事故や災害の多くも防げるようになった。その結果、解決できないのは誰かのせいだという発想の逆転が起きた。

4.2.  現代人は、「誰かの責任」に帰すのに慣れてしまった
 しかし原因が分からず解決も困難で責任が問えない問題は、まだある。むしろ今から増えるだろう。原因が分かったとしても必ず解決できる保証はない。「誰かの責任」に帰すのに慣れた現代人は、打つ手もないような本当に深刻な事態に直面できるだろうか。政府に依存しすぎて、むしろ脆(もろ)くなっていないか。
 

5.   こころすべきこと

5.1.  我々の知識や能力は限られていることに謙虚であるべきだ
 体験した数々の災厄を通してこの世の儚(はかな)さを「方丈記」に記した鴨長明は、それが誰かのせいだとは一言も言わなかった。ノーベル賞受賞の折にハイエクが述べた通り、我々の知識や能力は限られていることに謙虚であるべきだ。

5.2.  如何(いかん)ともしがたい問題があると認める
 すべての問題が誰かのせいであるわけでも、解決が可能なわけでもない。これからも起こるであろう、人間には如何(いかん)ともしがたい問題には深い悲しみが伴うことを、心の片隅で意識していたい。

5.3.  困難で複雑な問題の解決に最善を尽くす
 もちろん、「できることがはるかに多い現代人は、困難で複雑な問題の解決に最善を尽くすべきだ」。できることから、やっていく。これしかないのではないか。闇雲に「問題は全て誰かのせいだと主張する」ばかりの人は、彼らの努力を冒涜する者であり、真の解決への道を逸らしてしまう者だと思う。
 


<出典>
最近気になる「大変だァ」現象
産経新聞 正論(阿川尚之)(2019/11/01)
https://special.sankei.com/f/seiron/article/20191101/0001.html
 
写真は、遠藤周作『大変だァ』の表紙

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